鵠の杜舎

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神様が喜ぶ日、棟上げまつり。

2017-05-01

湘南高校の通学路を桜吹雪が舞う、4月15日。
久しぶりに訪れた鵠ノ杜舎は、上棟式もとい「棟上げまつり」を迎えていました。
柔らかな青空に高い棟が映えて、まさにハレの日らしい景色です。

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上棟式を、おまつりに

「サーカス」をコンセプトに華やかに装飾された空間やマスクは、ものづくりユニットトントンちくちくが鵠ノ杜舎のために特別にプロデュースしたもの。普段は静かなこのあたりですが、今日はご近所の方たちもたくさん集まって、朝からとてもにぎやかです。

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marukanさんが「子どもたちにものづくりの楽しさを教えたい」と恒例で開催している「木工ワークショップ」も、すでに満員御礼。この日のテーマは「バードハウス」。本格的な工具と木材を使って、子どものころ絵本で見たような可愛らしい鳥小屋がつくれます。

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小さい子ばかりかと思いきや、手伝っていたはずのお父さんが真剣になっていたり、ご近所のおばあちゃんがバリバリ電動工具を使っていたり…。ものづくりの楽しさには世代は関係ないよなあ、としみじみ。

 

家一軒ずつに神様が宿る

ほどなくして神主さんが到着。全員が二つの住居棟に挟まれたコモンスペースに集まりました。清々しく張りつめた緊張感の中、祭壇に向かうお施主さん、大工さん、設計士さんといった参列者を、ご近所の皆さんが見守ります。

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上棟式は、神様たちに対する「無事、棟上げができました。ありがとうございました」というお礼であり、「この家とここに暮らす人々が安全で幸福であるよう、お見守りください。よろしくお願いします」というご挨拶でもあります。

 

あたりを祓い清めた後、神主さんが「ぉぉぉぉおおおおおっ」というのびやかな掛け声とともに、家づくりを守護する神様と産土様(その土地の神様)をお招きします。お祓いを受けた二人の大工さんが骨組みだけの二階家の天井近くまで上り、真新しい棟木に御幣(ごへい)を飾りました。これは工事の安全と建物が永く丈夫に建つことを祈願するもので、魔除けの意味も込められています。

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神主さんがお酒などお供え物を差し上げ、祝詞を奏上した後、四方を祓い清めます。そして、関係者一同が順番に玉串を奉上。みんな神妙な面持ちですが、どこか誇らしげ。見ているこちらまで晴れがましい気持ちになって、思わず心の中で「おめでとうございます!」と拍手してしまいました。

 

仕事柄、上棟式に立ち会うのは初めてではありません。でも家が一軒建つごとにこれだけの人の時間と手間、喜びが込められていることに、ハッとしました。たとえば何気なく通り過ぎる住宅街、たとえば電車の窓からぼんやり眺める街並み。その風景を形作る建物のひとつひとつを、まるで神様みたいにたくさんの人の祈りが守っている。家づくりって、偉大です。

 

餅まきフィーバー

お次は、いよいよお待ちかね(!)の、餅まきです。都心部ではほとんど見かけることがなくなったこの風習、まだ伝統が残る地域出身の方には、とても懐かしい風景だそうです。かくいう神奈川育ちの私は、大人になるまで見たことさえなかった一人。初めて聞いたときには、「え?!お餅を投げるの?」とびっくりしたものです。
老若男女、数十人が手に手に袋を持って中庭で待ち構えます。最前列は、もちろん子どもたち。お施主さんや大工さんらが、お餅やお菓子のいっぱい詰まったカゴを抱えて二階の棟の高さまで上ると、「きゃー!」と地上の興奮も最高潮に。

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はじまりました!

色とりどりのお菓子やお餅が宙を舞うたび、子どもたちの歓声が上がります。それに応えるように、さらに景気よく振る舞う大工さんたち。きっと神様たちも、この様子を眺めてさぞや喜んでいるだろうなあ。

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昔は家一軒を建てることは、集落の人たちみんなの共同作業だったといいます。だからこそ上棟式は地域の行事であり、神様にお供えしたもののお下がりを振る舞うことで災いを祓う「餅まき」は、一緒に家を建ててくれた人たちへのお礼や労いでもありました。

 

現代では、地域の人たちで力を合わせて家を建てる、といったことはほとんどなくなりました。家を建てるのはプロの仕事であり、住む人でさえ自分の家づくりに手を動かして参加することはまれです。地鎮祭や上棟式にご近所の人を招くことも、今では珍しくなりました。

 

「みんなでつくる」?

そんな中、鵠ノ杜舎をつくる現場の人たちは、「みんなでつくる」ということにこだわっています。前回、お話を聞いたmarukan社長の西山さんは「(ご近所さんたちが)お昼だけでもお弁当を持ってきて、一緒に食べてもらってもいい。最終的には近隣の人たちと一緒につくったり、直したりするアパートができたらいいな」と言っていて、驚きました。

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賃貸住宅でそんなことができたら、本当に面白いし、楽しい。そう思う一方で、ひねくれた私は「でも実際のところ、難しいのでは?」と思ってもいました。現場の職人さんたちはどう思ってるのかな?社長の理想じゃないの?なんて。

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たしかに鵠ノ杜舎チームは仲良しですが……どうなんですか、社長!

 

ひねくればかりでもなく、これまでの現場経験も理由でした。本当は優しいけど、寡黙だったり頑固だったりして、なかなか一筋縄ではいかない職人さんをたくさん見てきたから。
そんなわけで上棟式を3日後に控えた昼下がり、菜種梅雨に濡れる鵠ノ杜舎を訪れました。現場の職人さんに「みんなでつくる」ってどういうことか、もう少し聞いてみたいと思ったのです。

 

>>「新しい時代の家のつくり方」につづく

 

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